統合失調症

【統合失調症】

感情の鈍麻・自閉症状・意志の減退・奇妙な行動・幻覚・妄想などを示めしますが、それらの症状の現れ方や経過は複雑で多様です。現在のところはっきりとした原因は不明で、多くの場合10歳代後半から30歳代前半の青年期に発症し、徐々に病状が進行します。症状には、幻覚、妄想のほか、意欲が低下し、何もしなくなる、他人と交流をもたなくなり引きこもりがちになるといったことがおこってきます。人格的にも、病気になる前に比べ、創造的で生き生きした部分がなくなることがあります。

【発症に至る傾向】

約120人に1人の割合(0.8%)で発症します。発症頻度はかなり高く、けっして「珍しい病気」とはいえません。
一説では脳内の神経と神経の間ではたらいている物質が関係しているといわれていますが、明らかな原因はまだわかっていません。ストレスや環境の変化など、外的要因でおこったのではなく、脳内に原因があるという意味で、統合失調症と躁うつ病(双極性障害)は、内因性精神病との表現も用いられています。
両親の一方が統合失調症の場合、その子どもが統合失調症になる割合は約16%といわれ、一般人口中の統合失調症になる割合より高いことから、発症には、ある程度遺伝が関係しているとも考えられています。一方で、一卵性双生児(遺伝的要因が同じ子供)の1人が統合失調症であっても、もう1人が統合失調症である確率は100%ではなく、約60%であり、このことが、統合失調症の発症には、遺伝だけではなく、それ以外の要因も関係していることを示していると考えられています。

【症状】

幻覚、妄想、意欲の低下がおもな症状です。
症状としては幻覚、妄想、興奮などの派手な症状(陽性症状)と、意欲の低下、自閉、感情鈍麻といった目立たない症状(陰性症状)に分けられます。病気の初期には、陽性症状が主体ですが、徐々に陰性症状が主体になっていきます。

♣幻覚
実際にはないものをあると知覚することを幻覚といいます。知覚の内容によって、出ていない音が聞こえる幻聴、無いものが見える幻視などに分けられます。

(例)「人の声が聞こえる」(幻聴)、「物が見える」(幻視)
統合失調症でもっともよくみられる幻覚は、幻聴です。幻聴の多くは人の声で、話される内容はさまざまですが、「○○しろ!」との命令や、自分に対する悪口や迫害するような内容が聞こえる場合が多く、これによる不安な気持ちや被害妄想を抱いたりすることがあります。

♣妄想
事実ではない出来事を、本当にあったことと確信することを妄想といいます。周りが、「それは事実ではない」と説得しても、納得し修正できません。妄想の内容によって

次のような妄想があります。

被害関係妄想:無関係なことを自分自身に関係があると被害的に確信します。たとえば「あの人がせきをしたのは自分へのあてつけだ」など。

注察妄想:「誰かから家の中を監視されている」など。

被毒妄想:「食べ物に毒を入れられている」など。

血統妄想:「自分は天皇家の子孫だ」など。

誇大妄想:「自分はすごい発明をした」など。

♣意欲の低下
統合失調症は、徐々に意欲が低下し無くなっていくのが特徴です。程度の差はありますが、多くの場合にみられます。以前に比べて仕事がてきぱきできなくなるという軽いものから、学校や職場を休みがちになる、家でごろごろするようになる、入浴をいやがったり、身の回りをかまわなくなるなど徐々に意欲の低下が顕著となります。また、意欲の低下がひどくなると、1日中ボーッとして、ほとんど何もしない状態となったりします。(無為)

♣自閉
「他者との交流が乏しくなる」「友人との付き合いを避ける」など周囲との関係を築くことを避け自室にこもるなどが特徴です。家にこもりがちとなることから周囲が気づくことがあります。

♣感情の鈍麻

感情表現が少なくなった状態をいいます。例えば今まで面白く感じていたテレビがおもしろく感じなくなったり、笑顔がみられなくなったり、悲しいときも平然としていたりといった喜怒哀楽の感情表出が見られなくなる状態をいいます。

♣思路(思考過程)の障害
会話から判断できる場合が多く話し方でわかります。よくみられるものに話が徐々に別の話題にそれていったり、唐突に別のことを言い出したりといったことが見られます。(思路弛緩)重症になると、他の人にはまったく話の意味が理解できない(滅裂思考)になります。

♣身体症状
不眠が多く、病気の初発症状や、再発するときの最初の症状であることが少なくありません。身体的には何ら異常がないにもかかわらず、動悸、頭痛、倦怠感など、いわゆる身体愁訴を訴えることもあります。

♣表情に現われる症状
独り言をいう独語や、おかしくもないところで笑う空笑がみられます。しかめ顔(顔をしかめる)、ひそめ眉(眉をひそめる)がみられることもあります。感情が鈍くなる感情鈍麻のため、顔の表情が乏しくなります。
◎病型
大きく、破瓜型、妄想型、緊張型に分かれます。

♠破瓜型(はかがた)
破瓜期とは思春期のことをさします。妄想型、緊張型にに比べて発症年齢が低く、思春期によく発症します。統合失調症のもっとも典型的な病態といわれて幻覚、妄想といった陽性症状もありますが、むしろこれより意欲の低下、自閉といった陰性症状が目立ちます。急に症状が出るのではなく、ゆっくりと現われ1~2年たって、発症に気がつくこもあります。
初期には学校を休みがちになったり、友人と遊ばなくなったりしますが周囲も、「なまけ」ぐらいに考えているうちに、ほとんど家にこもるようになり、家族とも話をしなくなります。また、身の回りのこと入浴や着替えをいやがったり、不潔でいても平気になるなど、だんだん病状が進行するにつれて、人格の水準が下がってくる特徴もあります。

♠妄想型
妄想が主症状です。発症年齢は破瓜型、緊張型よりも高く、20歳代後半から30歳代に多くみられます。破瓜型のように、人格水準が徐々に下がることは少なく、比較的人格が保たれるという特徴があります。

♠緊張型
興奮、滅裂な言動あるいは緘黙(押し黙ること)、幻覚、数日から数週の間に妄想がおこってきます。
症状が非常に激しいものの、持続は短く、1~3か月で、ほぼ落ち着きます。病状が落ち着いた後は、破瓜型のような人格の低下はあまりみられないものの、再発しやすいのが特徴です。

経過

経過はさまざまですが、最初は幻覚や妄想、落ち着かない状態で始まり、薬物療法で幻覚や妄想がおさまっても、その後、意欲が低下した状態が続く場合が多くあります。
薬物をやめてしまった後や、ときには薬物服用中でも、再び落ち着かない状態になり、病気が再燃(再発)することがあります。このような再燃は何回かくり返すことがあります。
意欲の低下や自閉は、経過とともに徐々に強くなっていき、病気になる以前より人格の水準が落ちます。これを欠陥状態と呼んでいます。
ほぼ完全によくなる場合が3分の1、欠陥状態になる場合が3分の1、人格の荒廃をきたす場合が3分の1といわれています。